歪んだ月が愛しくて1
彼等に対する苛立ちの正体は嫉妬だ。
その原因は分かってる。
俺が失くしたもの。
もう手に入れることが出来ないもの。
未だ焦がれて止まないもの。
その全てを彼等は持っているから…。
彼等が纏うオーラは忌々しくもあの頃の光景を思い出させた。
羨ましいと、妬ましいと、一度は捨てたはずの感情が顔を出す。
―――シロ。
追憶の中の優しい声。
でもそれは二度と叶わぬ夢となった。
―――シロ、さん…。
「そんな資格、俺にはないから…」
あの4人のせいで蓋をしていたはずの記憶が蘇る。
かけがえのない大切なもの、幸せな日々、そしてあの忌々しい光景…。
それと同時に誰かが耳元でこう囁く。
『お前の居場所はそこじゃない』
分かってるよ。
今更取り戻すことが出来ないものを望んだりはしない。
現実を見ろ。バカみたいな夢を見てる場合じゃないだろう。
それなのに…、
「本当に、それでいいのですか?」
その声に顔を上げて哀さんを見ると彼女の表情は複雑なものだった。
安心したような、でもどこか寂しそうな顔をして俺を見つめていた。
「後悔されませんか?」
「後悔?」
「私には立夏様がどこか無理しているように見えます」
「っ、」
その言葉に息を飲んだ。
まるで俺の心の奥底を見透かされているようで身体が強張った。
「もう我慢する必要はないのではありませんか?」
我慢?
「立夏様はご自分の好きなことをするべきです」
「自分の、好きなこと…」
何、それ…。
俺の好きなこと?
俺の好きなことって、なに?
自分のことなのに何も答えられなかった。