歪んだ月が愛しくて1
「困らせてしまいましたね…」
そう言って哀さんは困ったように苦笑した。
「……別に、困ってません」
ただ「自分の好きなこと」と言われても何も思い付かなかった。
その時点で俺には自分の意志なんてないのかもしれない。
自分のことなのにまるで誰かに生かされているような気持ち悪い感覚だ。
「でもそんなこと言っていいんですか?」
「そんなこととは?」
「生徒会を推奨するようなことですよ」
言葉で言うのは簡単だ。
でも哀さんの立場を考えたら無闇に口走っていいことではないと思う。
「アイツ…、生徒会と仲悪いんですよね?」
「紀田先生からお聞きになったのですね」
「はい」
生徒会の情報は殆ど紀田先生から得たものだ。
でもそれを聞かされたところで何も変わらない。
生徒会が碌でもない連中だとしても俺には関係のないことだった。
「確かに主人と神代様の関係はお世辞にも良いとは言えません。しかしそれは主人と神代様の個人的問題でして他の3人に対しては良くも悪くも普通だと思います」
「個人的問題?」
「それにつきましては私の口からは申し上げられません。ただあの2人の関係を一言で表すとしたら正に水と油。どう足掻いても相容れない存在と言えるでしょう」
「ふーん…」
文月さんにとって生徒会長は天敵ってわけか。
何の因縁があるのか知らないが、あのイケ好かない文月さんが嫌う天敵には興味が沸く。
ただ自分から近付きたいとは思わなかった。
何たって初対面がアレだからな。