歪んだ月が愛しくて1
立夏Side
「はぁっ…、」
悪夢から目覚めるといつもこうだ。
毎夜見る夢のせいでぐっしょりと寝汗を掻く。
「……最悪」
不快感しかない朝はシャワーを浴びてさっぱりする。
濡れた髪にバスタオルを被せて鏡の前に立つ。
そこに映る自分はもうあの日の自分じゃない。
髪も、瞳の色も、普通の人と同じ。
それなのに鏡に映る自分を見るといつも違和感を覚えるのはきっと俺があの日に囚われているからだ。
鏡に映るそれから目を背けて洗面所を出る。
シャワーを浴びた後は日課のコーヒーを淹れるためキッチンに立つ。
専用のコーヒーメーカーは実家に置いて来てしまったので即席のドリップタイプでコーヒーを淹れる。
それを口に含むと口内に広がる苦味に自然と眉間に皺が寄る。
「にが…」
飲み慣れていないせいかいつも以上に苦味を感じる。
でも俺にはこのくらいが丁度良い。
これを飲む度に嫌でも蘇るのはあの日のこと。
『…ごめん、シロ……』
忘れられない。
忘れちゃいけない。
これは俺の罪だから。
「ごめん…」
カーテンの隙間から差し込む光に眉を顰める。
不意にその光が昨日の彼と重なって見えた。
傍若無人の金糸の髪が脳裏に過ぎる。
「―――覇王」
彼等と自分が決定的に違うもの。
それは仲間と言うかけがえのない大切な存在。
彼等ならきっと自分と違う答えを導き出せたかもしれない。
俺が失ったものを持っている彼等なら。
そう思ってしまうのは嫉妬の延長線だ。