歪んだ月が愛しくて1
「もう話を逸らさないでよ!授業なんてどうでもいいじゃん!」
「どうでも良くはないと思うけど」
「ま、紀田じゃなかったらな」
「次の時間何やる?暇だから菓子パでもしちゃう?」
「女子か」
「眼鏡ちゃんへんけーん。今時のDKはお菓子好きなんだぜ」
「DK?」
希はDKについて説明してくれた。
どうやらDKとは男子高校生の略らしい。
「じゃあ菓子パけってーい」
希はどこからか大量のお菓子を取り出すと机の上に広げて食べ始めた。
「おい、今食うと昼飯食えなくなるぞ」
「甘いものは別腹なのよ」
「嘘吐け。意外と食細いくせに」
「意外ってどう言う意味ですかー?」
「あ、僕ポッキー食べたい」
「俺、苺のがいい!」
「はいよ。眼鏡ちゃんは?」
「いらない」
希は俺を呼ぶ時“立夏”と“眼鏡ちゃん”を交互に使い分けている。
俺の本体を眼鏡だと思っているのか。それとも昭和感漂う丸眼鏡が物珍しいのか。……いや、どっちもか。やたらと人の眼鏡を弄って来るし。
「立夏くんお菓子嫌い?」
「え、リカ甘いの嫌いなの?」
「好きでも嫌いでもない」
「じゃあ立夏にはこれやるよ」
希に手渡されたのは飴玉だった。
いらないって言ったのに。
「別に腹減ってないんだけど」
「持っとけよ。これなら好きな時に食えるからさ」
中々受け取らない俺に痺れを切らした希は俺のブレザーのポケットに手を突っ込み飴玉を入れた。
「ミント味」
「……どうも」
俺は面倒臭くなって断るのをやめた。