歪んだ月が愛しくて1
未空の言葉が頭の中を巡る。
『リカ、理由があるならちゃんと言って?言ってくれなきゃ分かんないよ』
「ハッ…」
乾いた笑みが漏れる。
分かって欲しいとは思っていない。
他人が他人のことを理解するなんて無理に決まっている。
綺麗事は聞きたくない。同情なんてされたくない。反吐が出る。
そんなことを思いながら廊下を進むと。
「お前が噂の転入生か?」
突如現れた数人の男子生徒。
彼等は俺を囲むようにして立ち塞ぐ。
「はぁ…」
転入してからずっとこの調子だった。
いい加減鬱陶しいからやめてもらいたいのだが、未空のせいで余計に拍車が掛かったと言っても過言ではない。
「噂通りだな」
「ああ」
噂?そう言えば以前絡んで来た奴等もそんなこと言ってたような…。
大方異例の転入生が物珍しくて様子を見に来たってところか。若しくは稀に見る不細工面を拝みに来たのか。ま、どっちだっていいけど。
俺は無視を決め込んで再び足を進めた。
「無視かよ。俺達なんて相手にしないってか?」
「覇王に推薦されるくれぇだからな」
「新参者のくせにお高く留まりやがって」
背後から挑発まがいなバカ笑いが聞こえる。
それだけならまだいい。
もっと面倒臭いのは…。
「ほら、アイツだよ」
「あれが例の転入生?」
「ただのガリ勉眼鏡じゃん」
「何であんな奴が生徒会に推薦されるわけ?信じらんない」
「しかも未空様に推薦されたくせに断ったらしいよ」
「何それ!本当有り得ないんだけど!」
「覇王様に推薦されるってことがどう言うことか分かってないんじゃないの!?」
「本当身の程知らずだよな」
「何様だよ」
これだよ、これ。
生徒会を断って以来この有り様だ。
本当面倒臭ぇな。