歪んだ月が愛しくて1



「そりゃ気になるだろう。あの生徒会に推薦された上に毎日のように覇王様から口説かれても断固として首を縦に振らないお姫様がいるなんてよ」

「キモ」



誰がお姫様だ。

その舌引っこ抜いてやろうか。



「ハッ、本当良い性格してるよなお前」



くくっ、と笑みを漏らす我孫子。
それに比例して俺の苛立ちは増すばかり。



「アンタの質問の意図が分かんないんだけど。結局俺が生徒会を断ったのがそんなに物珍しいわけ?」

「それもある。何たって覇王様が直々に推薦する奴なんてこれまで誰1人いなかったからな」

「え、」



その言葉に驚きを隠せない。



「……嘘?」

「嘘じゃねぇよ」

「じゃ、何で…」



俺なの?



「知らねぇよ。だからこっちは聞いてんの」

「………」



でもこれで辻褄が合った。
ここの連中が俺に向ける様々な視線。敵意、嫉妬、羨望、軽侮…。
彼等にとって学園の象徴である覇王に逆らった俺は異質なんだ。
だから我孫子みたいなミーハーが次から次へと探りを入れて来る。
覇王が…、と言うか主に未空が俺を生徒会に入れたがっていることに特に意味はないと思うが、どうせ“異例の転入生”の肩書に何かあると面白がっているだけだろう。だから他の3人も未空を止めない。まあ、その点に関してはここにいる殆どの生徒に該当するだろうがな。

要は俺じゃなくてもいいのだ。
特例で、物珍しくて、彼等の触手に掛かるものなら何であっても。
だからまともに相手にするだけ時間の無駄だし、彼等の暇潰しの玩具になってやるつもりもない。
それに例え俺が生徒会に入ったとしても彼等が俺を受け入れることはないだろう。
彼等が纏う空気はそんな中途半端なものじゃない。
仲間と認めた者以外近付くことは許さない。
そんな空気に俺は躊躇った。
関わっちゃいけない。近付いたら後悔する、と俺の中で何かが訴えている。



「なあ、俺と組まねぇか?」

「組む?」

「俺と組んで生徒会を潰さねぇか?」



何を唐突に。

我孫子の言葉が理解出来なかった。



「お前が生徒会を拒むなら丁度いいだろう」

「丁度いい?」

「俺は奴等が嫌いでよ。俺だけじゃねぇ。他にも同じ志を持った同士は沢山いる」



志?

同士?



「だから俺は奴等をぶっ潰すためのチームを作った」

「チーム?」

「族とかじゃねぇぞ。奴等に対抗するための組織みたいなもんだと思ってくれ」

「……対抗ってことはアンタも生徒会と仲悪いの?」

「気に入らねぇのさ。奴等は金と権力に物言わせて好き勝手に学園を乗っ取ってやがる。テメーの気に食わねぇことがあれば容赦なく切り捨てる、血も涙もない冷血野郎共だ。そのせいで何人もの仲間がここを追い出された…。それを阻止するためにはこっちだってそれなりの力が必要なんだよ」

「………」



『アイツ等は危ねぇ。何より性格が悪い。でもそんなガキ共をカリスマだのといい学園の頂点に祭り上げている連中がいるのも確かだ。関わらないに越したことはねぇよ』



いつかの紀田先生の言葉を思い出す。
やっぱり生徒会には何かある。
これだけ恨まれてたら嫌でも勘繰ってしまう。


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