歪んだ月が愛しくて1
「……復讐?」
「そんな大それたもんじゃねぇよ」
ははっ、と乾いた笑みを漏らす我孫子。
……本当かよ。
「でもこれ以上奴等の好き勝手にはさせねぇよ。奴等に“王”を名乗る資格はねぇからな」
何をどうしたらここまで恨まれるんだろうか。
覇王が何をしたのかは知らないが、彼等と自分が置かれている状況は少し似ている気がした。
俺も恨まれても可笑しくないことを沢山して来た。
光を遠ざける夜の世界で無駄な血を流し、多くの人間を犠牲にして今俺はここにいる。
彼等もそうだと言うのか。
こちらの世界に足を踏み入れていたとしたらその理由はそれぞれにあるのだろうが………やめた。
これではまるで俺があの4人に興味があるみたいじゃないか。
そんなものはない。断じて有り得ない。
でも、ずっと気になっていたことがある。
「……俺も、アンタに聞きたいことがある」
「何だ?」
『その様子だと、あの噂は本当みたいだな』
「アンタがトイレで未空に言ってた“あの噂”って何?」
「噂…?ああ、仙堂は生徒会長様の犬なんだよ」
「犬?」
我孫子の言葉を復唱する。
それでも違和感は拭い切れない。
「ここの連中の殆どが覇王様には忠実だ。中でも仙堂は覇王の一員でありながら生徒会長様の命令には絶対服従。まるで忠犬ハチ公のようにな」
「だから犬?」
「ああ。このことは学園の連中なら誰でも知ってるぜ」
「………」
それが未空が可笑しくなった理由。
でも本当にそれだけだろうか。
もっと他に何か…、別のものを抱えているように見えた。
「……他には?」
「は?」
「他にも何か理由があるんじゃねぇの?」
「………」
そう言うと我孫子は驚いた顔をして目を丸くした。
でもすぐにニヤニヤとムカつく笑みを浮かべてこう言った。
「気になんの?」
ああ、この顔…。
聞かなきゃ良かった。
気になる?
俺が未空のことを?
「有り得ない」
気になるはずがない。
そんなことあるはずがない。
「でも連んでるじゃねぇか。一緒にいるところよく見掛けるぜ」
「……別に。好きで一緒にいるわけじゃない」
てか見てんじゃねぇよ。
気持ち悪ぃな。
「じゃあ一緒にいたくねぇんだ、本当は」
「………」
「ん?」
「……アンタには関係ない」
「はいはい、またそれね」
我孫子はお手上げと言わんばかりに両手を上げる。
それ以上追及されたくない俺は態と素っ気ない態度を取り我孫子から距離を取った。
「ま、要は同類ってことだろう」
「同類?」
その言葉に無意識に眉を顰める。
「お前も奴等が嫌いなんだろう、俺と同じで」
「………」
「だから生徒会に誘われても断り続けてる。例えそれが覇王の命令であっても」
我孫子は薄気味悪い笑みを浮かべて言葉を続ける。
「お前は外部生だから覇王に歯向かうことがどんなに恐ろしいことか知らない。でもだからこそお前は俺達のチームに相応しい。いや、入るべきだ」
「だから同類ね…」