眠る彼女の世話係（改訂版）

プロローグ

　――綺麗だ。

　目の前には、ベッドの上でこんこんと眠り続けている少女がいた。寝返りを打たずにきっちりと真っ直ぐに眠るその姿は、まるで童話に出てくる白雪姫かなんかみたいだった。

　俺はベッドの横で彼女の目が覚めるのを待ったが、どうやた俺は眠り姫を目覚めさせられる王子様にはなれなかったらしい。
　そんなどうでもいい脳内ナレーションをする自分に半ば呆れながらも、俺はその部屋を立ち去ろうとした。

「……だれ？あんた」

　そんな俺の耳に届いた声はあまりにもガサガサで、声色は警戒心でいっぱいで、口調はこっちのことなんてどうでもいいみたいに雑だった。

「あ」

　驚いて固まる俺が、彼女には見えていただろうか？彼女は眠たげな目をまどろませたまま、俺が返答するのを待たずに目を閉じた。

「はぁぁぁぁっ」
　
　俺は深く息を吐いて、今度は振り返らずに部屋を後にしたのだった。
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