眠る彼女の世話係(改訂版)
 次に目が覚めたとき、私はベッドのそばで眠る男に気がつきぎょっとした。

(この人……家事代行の人だよね……?)

 対面したことがないなら、果たしてこの男がバイトの人なのか強盗なのかが分からない。不安に思いながらも、私は肩を叩く替わりにそっと声をかけてみる。

「……ねぇ……」

 渇ききった喉は、これでもかというほどひどい声を絞り出す。男は体をびくっとして、私を見て、寝ぼけているのかふにゃっと笑った。

「やっと起きたぁ……」

 男は頭をぶんぶん振ると、今度はしゃきっとして私に言う。

「家事代行サービスでやってきました、東堂夏樹です。よろしくお願いします」
「七野、りるは、です」

 頭を下げられて、私もつられて頭を軽く下げる、というか動かした。
 ご丁寧にも自分の学生証とバイトと証明するカードを見せた男はーー夏樹は、どこか安心したように見えた。
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