眠る彼女の世話係(改訂版)
「ね、年も近いだろうからタメでもいい……ですか?」

 途中まで砕けた話し方をして、夏樹はまだ許可をもらってない、と思ったのか語尾だけが丁寧になる。私はこくんと頷いた。私の反応に夏樹は、犬が尻尾をぶんぶん振って喜んでるようにも見えた。

「あっ、起きてからなんも食べてないよね、いやでも先に水か……。薬ってもういま飲む?」

 矢継ぎ早に言われてどこから答えるべきか少し迷って言う。

「体起こして……水だけちょうだい」

 たどたどしい手つきで私の体をクッションに預けさせた夏樹は、水を渡してくる。しばらくぶりに飲んだ水にむせそうになったが、ひんやりと冷えた水がじわじわと体に染みてくように感じた。
 そんな感覚も束の間。

(気持ち悪いな……)

 ずっと橫になっていると、体の平衡感覚がおかしくなる。飲んだ水を戻さないように押し止めて、私は夏樹に尋ねた。

「いま……何日で何時?」

 夏樹はぱっと時計を見て、「22日、9時くらいだよ」と言った。

(まだ次薬飲めるまで時間あるのか……)

 調子が悪そうな私を夏樹は心配そうに見ている。黙った私に、夏樹は言いにくそうに聞いた。

「えと……りるはちゃん、なんかの病気、なの?薬もたくさん飲んでるみたいだし」
 
 サイドテーブルに乗せられた薬をちらっと見る。

「病気じゃ、ない……それ、睡眠薬だから」

 ただえさえ副作用の強い薬だ。服用間隔は守りましょう、そんなルールをきちんと守っている私を、誰か褒めて欲しい。
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