だから、あたしは

 あたしは、あなたと一緒にいたい……。ひとつになりたい……。好き。好き、あたしの中で花咲いている感情をキスという形にして現していく。こんなにも唇が熱い。好き、好き。好きなの。あなたを想うと魂が溶けて輝いていくような気がする。

 大好きな人が、あたしの鎖骨に手を添えながら囁いている。

「いずみ。いつかは女の子に戻るんたよな? その日が待ち遠しいな」

 あたしの首筋に手を添えてから背中に腕を添えて抱き締めた。そのまま、あたしの耳朶や首筋に口付ける。あたしの髪に手を添えてから優しい手つきで梳いている。唇が、あたしの耳朶を甘噛みしている。でも、ふと、止めてしまった。

「騎士、どうしたの?」

「まずいな……。誰か来る。母さんが来たのかもしれない。声が聞こえる」

 廊下の向こうからカツカツというハイヒールの音が響いている。ナースステーション。看護師さんが何か話している。澄子さんの声がズンズンと近くなっている。騎士は、お茶目な顔でウインクしてから素早く掛け布団をかぶっている。

「俺は眠っているフリをするよ。おまえも神妙な顔で付き添っておいてくれ。母さんが何か話しかけたなら俺は目を覚ますことにする」

「親孝行なのね」

 先刻までは熱い抱擁をしていたのに病人に逆戻り……。母親の前では行儀のいい息子になりたいのね。涙目の澄子さんが来た。すると、この時、初めて目覚めたような初々しい表情を浮かべて騎士が呟いた。

「ああ、母さん……」

「剣、ああ、意識が戻ったのね。つるぎ……。心配したのよ」

「心配かけてごめんね……。すぐに元気になるよ」

 澄子さんは、ポロポロと涙をこぼしながら、ヒックとしゃくりあげ、泣き笑いの顔で息子の手を握り締めている。

 あたしは、そんな二人を見守ったのだった。
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