だから、あたしは
 こないだ、ヤフーニュースで本田の名前を久しぶりに見た。ハワイのホームセンターで銃乱射事件があり、邦人の犠牲者が出たのだ。犯人は酒乱の米兵。

 いきなり発砲した犯人は自殺したている。胸と腹部を撃たれた本田は意識不明の重態となって倒れたのだ。

 以後、ずっと危篤状態が続いている。

《もしかしたら、今頃、死んでいるのかもしれません。それは、大河内の呪いの成果というものなのでしょうか? あたしには分かりません。でも、天罰なのだと思います。あんな嫌な奴の事は忘れて学園生活をエンジョイしようと思っています。今後も、男の子としての人生を思いっきり楽しむつもりです》

文字を打ち込みながら、あたしは。これまでのことを振り返って行く。 

十一月の末に大いに盛り上がった文化祭での女装コンテストも楽しかった。けれども、あたしは出場していない。

騎士が、あたしの女装を野郎どもに見せたくなかったからだ。

 それに、あたしの女装写真がネット上に流れるのはよくないと騎士は考えていた。だから、自らクラスメイトを説得してコンテストに出ると言い出した。

『部活動もできなくて暇だから俺にやらせてくれーーー』

 脚にギブスを巻いた状態で、どうやって女装するのかと皆に問われ、騎士は平然と答えた。

『マリーアントワネットになるよ。ドレスを膨らませるパニエもあるんだよ。うちの母親がすべて持っている。いずみより美人になってみせる!』

 澄子さんは、単なる宝塚ファンの追っかけかと思っていたが、実は、音楽学校の卒業生だったことが分かってビックリした。娘役として舞台に出たことがあるそうなのだ。

 清く、正しく、美しく。澄子さんは、厳しい学校生活を生き抜くタフな一面もあったのね。

 本当はピアノや歌が得意なのに、そういうことを自慢しなかったところが素敵わ。

 あたしが澄子さんから本格的な舞台メイクの手ほどきを受けたおかげで、騎士は宝塚メイクを駆使して優勝した。

 思い出すと笑っちゃう。菊太郎は感無量といった声で呟いていたっけ。

『おう、久しぶりに見たなぁ。リボンの騎士はやっぱり綺麗だよな。騎士も抱けるかもしれない』

 でも、不本意なのか本人は複雑きな顔をしていたわ。

 可笑しくてクスクスと笑っていると、騎士が、舞台袖でしんみりと嘆いたのだ。

『くそーーー。明日から、リボンの騎士って言われるのかと思うと泣けてくるよ……』

 他校の女子高校生の腐女子の人達がリボンの騎士に萌えまくっていた。

 あたし、後日、澄子さんと宝塚に行って初めて分かったのだが、リボンの騎士いう漫画があるらしい。その漫画は、ボーイッシュな女の子が王子様として暮らしながらも葛藤するという感じのストーリーだった。

 性別って何だろう。

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