だから、あたしは
「菊太郎って面白いね。日本人は前田先生みたいに幼い女の子の顔をした爆乳ロリータが好きなんだと思ってたよ」

「そういう奴は大勢いるようだが、俺はモデル体型が好きなのさ。痩せた身体にエロスを感じる。でも、騎士はルパンの不二子ちゃんみたいな胸がいいらしいぞ」

「へーえ、そうなんだ」

 騎士の好みを聞くと心が濁ってきたわ。あたしって女子だった時から貧乳なんだもの。

 この時、射抜くような強い視線を感じてしまい、あたしは振り返った。やだーー。何なのよ。感じ悪いわ。桃園の強い視線がダイレクトに飛んできて、あたしはビビッた。剣呑な目つきをしている。まるで、嫉妬しているかのように桃園が詰め寄り割りこんできた。

「菊ちゃん! 早く練習に行けよ。遅刻しちゃうぞ! 先輩達に殴られちゃうよ!」

「おう。そうだったな。いずみ、マネーシャーになりたいのなら三階の部室に行けばいいぞ。大河内さんに申し込めばいいぜ」

 あたしがマネージャーになろうと思ったのは気紛れに過ぎない。それなのに、桃園が眉間にシワを寄せて詰め寄るようにして反対したのである。

「山田いずみ。やめろ。野球部に入ったなら後悔するぞ。マネージャーなんかやめとけよ!」

 いつもと同じ耳障りな口調だった。あたしは顔をしかめながら見つめ返していく。桃園は恐れや不安を露にしていて、その言葉はやけに切羽詰まっている。

「あ、あそこには本物の獣がいるんだぞ。おまえみたいな奴は奴等に苛められるぞ!」

「ケモノ?」

 何だそりゃ。大袈裟な言葉にキョトンとなる。

 苛めなんて、どんな社会にも起こり得ることだわ。そっか。きっと、桃園は誰かに苛められたのね。

 この子の場合はクラスのでも人望が薄い。嫌われるのも当然よ。あたしは決して桃園みたいになるもんか。しかし、桃園は、もう一度、強い口調で念押した。

「いいか、おまえは野球部には近寄るなよ」

 あたしはその言葉を聞き流して歩き出すことにした。

 やっぱ、一度ぐらいは部活ってやってみたいよね。

 この身体が、いつ、どういうタイミングで女子に戻るのか分からないけど、男の子の間は、男しかやれないスポーツとかやってみたい。

 家に帰ったところでやることがない。どうせ暇だもの。

 ということで、迷うことなく、野球部の部室へと一直線に向っていたのである。

                 ☆
       
 新校舎の三階が各部の部室となっているというのでさっそく行ってみた。ふむふむ。ここが野球部なのね。部屋に入ると、トレーニングの器具やパソコンや本棚などが置かれていた。

 まだ出来たばかりの綺麗な部屋だ。野球部のデータ解析や作戦会議もここで行なわれているという。

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