だから、あたしは
 本田は、チッと顔をしかめながら出て行った。という事で、部室に鈴木と二人きりになってしまった。こはこれでマズイんわ。だって、鈴木は最高にウザイんだもの。

「山田、先刻の態度は何なんだ。新入りが偉そうにしてんじゃねぇよ。先輩には敬意を示せ。俺が一年の頃には先輩の靴まで舐めたぞ。それなのに、おまえときたら……」

 鈴木は、あたしの制服を掴んで強引にゴミ箱に乱暴に突っ込んている。

「な、何なの!」

 キッと睨んで自分の衣服をゴミ箱から取り出していく。食べ物のカスやペットボトルの液体などが入っているせいでネチっとした茶色の汚れが着いた。

 ムカついた。仕返ししてやると息巻いた。あたしは鈴木のロッカーを開けて制服をゴミ箱に入れる。鈴木は焦って自分の制服を掴んだ。

「山田ーーーーー。おまえ、正気なのが? 下級生のくせにふざけんなーーーーーー!」

「あなたが先に仕掛けてきたんでしょ!」

 制服の上着を引っ張り合いとなっていた。むむむっ。

 やばい。鈴木の制服のジャケットの袖の付け根が破れちゃってる。鈴木は真っ青になり、無残に敗れた衣服を見つめながら座り込んでいる。

「ふ、ふざけんな! 制服がボロボロじゃねぇかよ!」

 春秋用のジャケットは英国風の洒落たデザインなの。それなのに……。あちゃー。脇の下……。ザックリ。でも、元々、鈴木の制服は袖丈が短くて不恰好だった。

「前から、小さいなぁと思っていたんです。買い直すべきです。いいタイミングだと思います。スボンの膝も薄くなってて貧相だったもの。誰かのお下がりなのですか?」

 鈴木はグッと拳を握っ奥歯を噛み締めている。古びた鉛のように顔が沈んでいる。

「ふ、古着で悪いかよ?」

「弁償します。いくらですか? 三万ぐらいですか?」

 しかし、鈴木は目を吊り上げたまま言い捨てたのである。去り際の鈴木は泣きそうな顔になっていた。

「いらねぇよ。馬鹿にしやがって! 覚えていろよ」
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