だから、あたしは
「山田。話がある。俺はおまえの秘密を知っている。ここでバラされてもいいのかよ!」

 あたしを外に連れ出している。そして、部室近くの小さなトイレに押し込んだ。ドンと押し出されるような形で洗面台の背後の壁に押し付けられてしまったのだ。

「山田いずみ! おまえ、女だろう。声も甲高いしヒゲがまったく生えてない! 騙しているつもりだろうけどバレてるぜ!」

 突然、何を言い出すのかと思ったら……。そんな事が言いたかったの?

「言いがかりは止めてくださいよ!」

「しらばっくれるな! バラされたくなければ退部しろ」

「女じゃありませんよ。胸を触って確認してみればいいんですよ」

 最近は筋肉質なボディとなっている。ほーれ、あたしの鍛えた腹筋を見やがれ。おらよっとシャツをめくって腹の筋肉を見せてやると鈴木が顔を顔色を変えて唇を震わせた。

「そ、それならこれは何なんだよ?」

 ユニフォームの尻ポケットからプリクラ写真を取り出している。

 昨年、女装のレイラと共に女子旅をした時に台湾で撮ったものなのよ。

「おまえ、友達と一緒に嬉しそうに笑っているじゃねぇかよ! ロングヘアの女はおまえだよな?」

「双子の姉の写真ですよ。姉がいることは菊太郎に聞いて下さい。そんなことより、なぜ、これをあなたが持っているのですか。それ、お財布に入れていたんですよ」

「双子?」

 山田いずみに女装癖があるというふうには思わせてしいけない。

 あたしは堂々と嘘を言ってやったわ。

「お姉ちゃんと僕はソックリなんです。僕も、お化粧したら女の子っぽくなります。だけど、僕は男です。なぜ、写真を持っているのですか? あなたが財布を盗んだんですね? 違いますか? あなたって恥知らずな人ですね!」

「憶測で喋るな!」

「憶測じゃありません。その写真が何よりの証拠じゃないですか。哀れな人ですね。あなたは生活が苦しいんでしょう?」

「う、うるせぇ! おまえに何が分かる! 所詮は親の脛齧りだろう! この写真は拾ったものだ。盗難事件のことは関係ないからな」

 そう言い捨てると鈴木は立ち去ったのよ。あたしは鈴木の背中に向けてあっかんべーをしてやった。

 何なのよ。親のスネ齧りって意味わかんないわよ。ネットで検索するのも面倒臭いわよ。 

 自宅に戻ってから騎士に昼間の事を話すと意外な事を教えてくれたのだ。

「親の脛を齧るってのは、親に甘やかされているという意味だ。自分は苦労しているって訴えたかったんだろうな。公園で、近所の小学生が食い残して捨てた給食のパンを拾って飢えを凌ぐような壮絶な経験をしている人だからな。最初に見た時は何かの冗談かと思った。他の部員が捨てたアンダーシャツやソックスを拾っていたこともある。あの人も大変なんだよ」

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