だから、あたしは
12 試合当日
「いずみ。おはよう」
試合当日の土曜の朝の事である。焼きたての四枚切りの厚い食パンに桃のジャムを塗っていると騎士がコーヒーを淹れながら言った。
「あのさ、昨日、おまえが言った言葉を寝る前にじっくり考えてみたよ。俺は傲慢だったのかもしれないな。遠慮して顔色を窺ってきたんだよ。ポジションを奪う事は、あの人自身の未来を奪うような気がして怖かった。失礼な話だよな。実際に競争したら俺が負けるかもしれないのに」
「騎士……!」
「だから、今日の試合は思いっきりやる事にするわ」
そう言ってくれて嬉しい! という事で二人でグラウンドに向ったのだが、くじ引きをした結果、騎士と大河内とあたしは同じ赤組だった。
試合が始まってすぐに先頭打者ホームランか出たのだ。打ったのは騎士だった。一番打者として騎士が結果を出した事が嬉しい。
「騎士、ホームラン、かっこいいよ」
伸びやかな動作で駆け戻って来た騎士とハイタッチをすると騎士がベンチに座る。そして、ニッと白い歯を見せながら嬉しそうに言った。
「やったぜ。バックスクリーンに直撃だぜ」
ちなみに、騎士の二打席目はショートゴロ。三打席目はセンター前ヒット。四打席目は技ありのツーベースヒットを放った。打撃だけではなく守備も華麗にこなしている。すごくいい。
吉良監督とスコアラー部員は互いに見つめ合っている。騎士の野球センスに目を細めているようだった。練習試合も、動作解析や運動効率を分析する人達がいるのよね。プレイ中の騎士を観察しながら監督の脇にいるブレーン達が呟いている。
「騎士は、捕球してから投げるまでが速いですね」
「はい。動作に無駄がありません」
「打席に立った時の選球眼がいい。臭い球は巧みにカットしてファールにして上手く粘る。騎士みたいなタイプがいると便利だ」
彼等は動作を解析する事に夢中になっている。今日は、新戦力を見極める為に全員にチャンスを与えている。ちなみに菊太郎は白組。白組みは一年の相川と城先が投げる予定となっている。
相川は、フォークとシュートの切れが素晴らしい。城崎は、球威のある球を投げている。騎士の活躍を見た鈴木は焦りまくっている。いい所を見せようとしたせいなのか、ショートの守備で大きなミスをやらかしている。打撃も調子が悪くて精彩を欠いている。
試合も終盤に差し掛かった。吉良監督が不意にあたしを手招きして告げたのだ。
「山田、八回裏に登板しろ。ブルペンで肩を慣らしておけ」
「あっ、はい!」
まさか、あたしにチャンスが巡ってくるとは……。よーし、がんばるぞぉとばかりにブルペンに向かおうとすると、大河内がシリアスな口調で囁いたのだった。
「山田くん、今日は、ナックルを投げようなんて考えてはいけないよ」
「どうしてですか?」
試合当日の土曜の朝の事である。焼きたての四枚切りの厚い食パンに桃のジャムを塗っていると騎士がコーヒーを淹れながら言った。
「あのさ、昨日、おまえが言った言葉を寝る前にじっくり考えてみたよ。俺は傲慢だったのかもしれないな。遠慮して顔色を窺ってきたんだよ。ポジションを奪う事は、あの人自身の未来を奪うような気がして怖かった。失礼な話だよな。実際に競争したら俺が負けるかもしれないのに」
「騎士……!」
「だから、今日の試合は思いっきりやる事にするわ」
そう言ってくれて嬉しい! という事で二人でグラウンドに向ったのだが、くじ引きをした結果、騎士と大河内とあたしは同じ赤組だった。
試合が始まってすぐに先頭打者ホームランか出たのだ。打ったのは騎士だった。一番打者として騎士が結果を出した事が嬉しい。
「騎士、ホームラン、かっこいいよ」
伸びやかな動作で駆け戻って来た騎士とハイタッチをすると騎士がベンチに座る。そして、ニッと白い歯を見せながら嬉しそうに言った。
「やったぜ。バックスクリーンに直撃だぜ」
ちなみに、騎士の二打席目はショートゴロ。三打席目はセンター前ヒット。四打席目は技ありのツーベースヒットを放った。打撃だけではなく守備も華麗にこなしている。すごくいい。
吉良監督とスコアラー部員は互いに見つめ合っている。騎士の野球センスに目を細めているようだった。練習試合も、動作解析や運動効率を分析する人達がいるのよね。プレイ中の騎士を観察しながら監督の脇にいるブレーン達が呟いている。
「騎士は、捕球してから投げるまでが速いですね」
「はい。動作に無駄がありません」
「打席に立った時の選球眼がいい。臭い球は巧みにカットしてファールにして上手く粘る。騎士みたいなタイプがいると便利だ」
彼等は動作を解析する事に夢中になっている。今日は、新戦力を見極める為に全員にチャンスを与えている。ちなみに菊太郎は白組。白組みは一年の相川と城先が投げる予定となっている。
相川は、フォークとシュートの切れが素晴らしい。城崎は、球威のある球を投げている。騎士の活躍を見た鈴木は焦りまくっている。いい所を見せようとしたせいなのか、ショートの守備で大きなミスをやらかしている。打撃も調子が悪くて精彩を欠いている。
試合も終盤に差し掛かった。吉良監督が不意にあたしを手招きして告げたのだ。
「山田、八回裏に登板しろ。ブルペンで肩を慣らしておけ」
「あっ、はい!」
まさか、あたしにチャンスが巡ってくるとは……。よーし、がんばるぞぉとばかりにブルペンに向かおうとすると、大河内がシリアスな口調で囁いたのだった。
「山田くん、今日は、ナックルを投げようなんて考えてはいけないよ」
「どうしてですか?」