だから、あたしは
「本田さんが吸ってたんですよね?」

「はぁー。てめぇ、言いがかりつけてんじゃねーぞ」

「言いがかりじゃありませんよ! まだ、煙が出てます。それに、この吸殻に先輩の唾液が残っていると思います。警察に届ければ分かることです」

「てめぇ、余計なことしてんじゃねーよ」

 ダンッ。狭いトイレの中で手首を押さえつけらている。吸殻を強引に奪われてしまう。本田は吸殻ごと便器の中に投げ込みレバーを押すと流してしまった。こいつは証拠隠滅をしている!

「やっぱり、あなたが吸ってたんですね!」

「うるせぇな。煙草ぐらいいいだろう? 正義の味方ぶってんじゃねぇよ」

「いいえ。これは煙草じゃありません! 違法なものです」

「おい、調子、ぶっこいてんじゃねぇぞ!」

 グイッと、あたしの前髪をつかんだ。脅すように強い声で怒鳴っている。

「おまえ、先刻、鈴木の顔にわざと当てたんだろう? そうすりゃ、騎士がレギュラーになれるもんな。おまえ、鈴木の前で土下座して詫びろよ! いいや、そんなんじゃ物足りないぜ。死ねよ! バーカ!」

 一発触発の空気である。この時、本田への反抗心を抱いていたわ。負けるものかと、メラメラと反抗心が沸き立っているんたもの。それで、ついつい、余計なことを口走っていたのだった。

「あなただって怪我をさせたじゃないですか。走塁の練習中に菊太郎の指をスパイクで潰そうとしたそうですね」

「いい加減なことを言ってんじゃねぇぞ! うぜぇよ。おまえ、マジでキモイんだよ!」

 こいつの凶暴性を煽るかのように、突然、背後で大きな雷が響いた。本田が下種びた笑いを浮かべている。

「なぁ、おまえは男に掘られるのが趣味なんだろう? 分かってるぜ。大河内に掘られたのか? 好きなだけやってやるぜ」

「きゃっ!」

 両腕をねじられて閉じた便座の蓋に顔を押し付けられた。膝をついて、尻を突き上げるような格好にさせられてしまう。

「ほーら、ズボンを下ろせよ。でないと、てめぇの頭を蹴り上げるぞ。スイカみたいに頭をかち割るぞ」

「いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

 絶望的な気分で叫んでいると、本田が尻を思いっきり蹴飛ばした。そして、脅すように怒鳴り散らした。

「てめぇ、静かにしろ! マジで潰すぞ!」

「きゃーーーーー!」

 こいつには力では叶わない。その時。トイレの電灯がパチンと点いた。天の助けとはこの事だ。

「やめなさい!」

 トイレに西島先生が飛び込んできた。おそらく、あたしの悲痛な叫び声が外まで響いたのだろう。

「本田君、そこで何をやっているの!」

 あたしは個室の便座の蓋に顔面を押し付けられている状態だった。あたしは髪を振り乱して泣いている。誰が見てもイジメの現行犯だ。本田はすぐさま、あたしから離れた。

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