だから、あたしは
2 いずみがこうなった理由
 今は、こんなんだけど、元々は普通の女の子だった。毎月、きちんと生理も来ていたし、Bカップのオッパイもあった。

 あたしは小学四年までは日本で暮らしていたんだけど、小学五年生からはパパと共にマレーシアで暮らすようになっていたのだ。パパがは大徳寺製薬の研究員だ。

 マレーシアの小さな島に研究室の支部があり、熱帯の森林や海から薬の成分となりえるものがないかどうか探していたの。社宅として会社が借り入れているコテージがあり、隣の家にはユダヤ系のアメリカ人の親子がいた。

 あたしと仲のいいお友達の本名はブライアン。

 ブライアンは普段は男の子として暮らしているけれども、あたしと二人きりの時は、女の子として振舞っていた。つまり、ブライアンはトランスジェンダーなのだ。

『いずみ、ほんとは、あたし、ブライアンじゃなくてレイラって名前になりたいの』

 あたしは、プライベートな場所ではブライアンが望むとおりにレイラと呼んであげていた。

 レイラの夢は、いつか性転換して女の子になる事だった。ちなみに、レイラの母親はシングルマザーのレオドラ・ダイヤモンドである。ハーバード大を卒業している理系の才女で、大徳寺製薬で勤務している。レオドラは、マレーシアの研究所の主任で自由な裁量権を持っていた。

 いわゆる創薬研究職の人で、レイラは東南アジアの豊かな植物はもちろん、海の生物から薬の成分となりそうなものを見つけるために研究に励んでいた。海の生物に詳しい博士でいくつもの論文を発表している。

 仕事の傍ら、女の子になりたいと願う一人息子の夢を叶えようと性転換の薬の開発に取り組んでいたのである。

 人間以外の生き物の中には、自らの性を途中で変えるものもいるという。

 例えは、ヒラムシの場合は、互いの陰茎を武器に闘って勝った方が雄となり負けたほうが雌の役を受け持ってきた。

 あるいは、メスが全滅するとオスの中からメスに性転換する魚もいる。

 雌雄同体のツワモノもいるし、そもそも性を持っていないものとか、生物の世界は多様性に溢れている。

 他の生物の性別は流動的に変わっている。それならば、人間もとレオドラは意気込んだようだ。 

『あたしは息子の身体にメスを入れることなく性を変えてみせるわ。画期的な方法で性を変えてみせるわよ』

 彼女は、酔ったまま、性転換の薬について何度も語っていたのだが……。

 その日、あたしはレオドラの家のガレージの冷蔵庫を開けてレモネードにソックリな液体を飲んだ。おかしいなと気付いた時、胸が急速に熱くなって吐き気を感じて座り込んだ。

 死ぬと感じて悶絶して膝をつく。酸素を求めて倒れこんが、しばらくすると呼吸が楽になった。

 やばい、やばーーーい。毒薬を飲んじゃったかもしれないわ。慌てながら訴えた。

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