だから、あたしは
『レオドラ、レイラ、レモネードが変な味になってるよーーーーーーーーーーーー。つーか、喉と胸が痛いよう。身体が火照っちゃうよ。こんなのおかしいよーーー』

 すると、レオドラが緑色の瞳を見開いて悲痛な声を上げた。

「何て事なの。それは臨床実験前の試作品なのよ!」

 その翌日、胸が急速に萎んだかと思うと、ホラー映画のように、あたしの身体からオチンチンと金玉が生えてきた。これには、パパもびっくりたまげた。

『レオドラ、娘の身体を早く戻してくれ』

 その夜、あたしのパパとレオドラは揉めに揉めた。同僚としても隣人としても仲が良かったというのに、パパは怖い顔で睨んでいた。

『レオドラ、君のせいだぞ。早く、大量の女性ホルモンを飲ませて治してくれ!』

『強引な治療をすれば副作用を起こして死ぬかもしれないのよ! まだ、人体では試していないわ。だから、正確なことは何も分からないのよ! だけど、時間がたてば戻る。それだけは言えるのよ』

 会社にさえも内緒の非合法の実験。今回のことが世間にバレたらレオドラは職を失ってしまう。それだけは避けたいと思ったようである。

『理論が正しければ時間が経つと自然に治癒するのよ。細胞は常時入れ替わっているわ。鼠に対しての実験では投薬をやめると時間をかけて自然に戻っていったの。何もしないことが一番安全なのよ。一年か二年、辛抱をすればいいのよ。そういうものなのよ』

『馬鹿なことを言わないでくれ。ガラッと体付きが変わってしまったんだぞ。家政婦の目は誤魔化せない。学校の友達にもバレてしまうじゃないか』

『そうね。しばらく、雲隠れするしかないようね。いずみ、あなた、男子のフリして、どこか遠いところで暮らしなさい』

 ということで、急遽、あたしは日本の私立学校に入る手続きをしたのである。別れ際、空港ロビーでレイラがあたしを抱き締めた。

『いずみと会えなくなるなんて寂しいわ。うちのママのせいで、こんなことになってごめんなさい』

『レイラが飲んでいたら女の子になれていたのにね』

『ママが言うには、あれは試作品で不完全なものなのよ。あたし、いずみのことが心配で胸が張り裂けそうよ。ああ……。いずみにオチンチンが生えるなんて……。もしかして、金玉もついてる?』

『うん。小さいけど,二つあるよ』

『いやーーーーーっ。どうしましょう!』

 あたし以上に、レイラが青褪めて今にも倒れそうな勢いで狼狽していた。しかし、時間が経てば、いずれ元の身体に戻れると言われている。

 違法な人体実験の事が世間にバレるとレイラのママは職を失う。だから、あたしは身を隠す事にしたのである。

 けれども、やはり精神的に参っていたらしい。

 生理前に感じるような苛々が、あたしの心を引っ掻き回していく。色々なものに当り散らしたくなっている。

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