だから、あたしは
へーえ。そうなんだ。良かった。さて、ここからが本題。
「弟から聞きました。鈴木さんは、わたしの写真を拾って届けてくださったそうですね。ありがとうございます。優しい方なんですね。あれは親友と撮った思い出の品なんです」
スッと手を握り締めると鈴木は真っ赤になって慌て始めた。
「いや、あの……。いいっス。あの、あの、アリスさん、そ、その手を離してください」
「あ、ごめんなさい」
触れた瞬間、鈴木の指のマメに気付いた。毎日、何千回もバッドを振ったに違いない。練習を一日でも休むとアスリートの筋肉は衰えてしまうのだ。早く復帰して欲しいと素直に思った。
鈴木は意固地で偏屈な奴だけど、なんつーか、どこか憎めないところがある。
「ところで、写真はどこで見つけたのですか? 弟の財布はグランドに面したトイレの個室に捨てられていたそうですが、あなたは、そこで見つけたのですか?」
「渡り廊下に沿って側溝があります。そこにプリクラとポイントカードが落ちていたんです。財布のことはよく分かりません。春先に盗難事件が多発していました。副部長としては事を荒立てることなく、再発防止に努めたのですが……」
「と、言いますと?」
「ロッカーの鍵をかけ忘れた奴を見つけたなら注意したり、合鍵で鍵をかけて予防をしておりました。山田の場合、その日、たまたま、ロッカーの鍵をかけ忘れていたんじゃないかと思います。僕も、その日は忙しくてチェックしておりませんでした。どうも、すみません」
えっ? 鈴木、いい奴じゃん。疑ってごめんね。
「鈴木さんの責任ではありません。そ、そうなんですか……。学校も何かと物騒なのですね」
密やかに、あたしは首をかしげていた。犯人は鈴木じゃないとなると、どう考えても怪しいのはあいつしかない。
本田。
あいつの邪悪な顔が脳裏に浮かんだ。たちまち、心底、胸クソが悪くなって悪寒がしてきた。
☆
病院の女子トイレで髪を整えてから病院前のバス停に向かう。せっかくだから、このまま街を歩いて買い物を楽しむことにしよう。
明日から十月。真夏に比べると秋は日が暮れるのが早い。
明日、騎士の誕生日なのね。何か、プレゼントを買わなくちゃ! だけど、何を買えばいいのか分からないよ。
「そうだ! 澄子さんに聞けばいいかも!」
今頃は、豪華客船でエステやグルメを満喫しているのよね。邪魔にならないようにメッセージを送っておく。
『いきなりですが、騎士の好物を教えて下さい。献立の参考にします』
お料理は苦手だけど頑張って作ってみようと思ったのだ。
ロフトや雑貨店や輸入雑貨に立ち寄り、アロマ・キャンドルなどを買ってみた。楽しみだわぁ。蝋燭の灯りだけでお誕生日を祝うのよ。ロマンチック!
「弟から聞きました。鈴木さんは、わたしの写真を拾って届けてくださったそうですね。ありがとうございます。優しい方なんですね。あれは親友と撮った思い出の品なんです」
スッと手を握り締めると鈴木は真っ赤になって慌て始めた。
「いや、あの……。いいっス。あの、あの、アリスさん、そ、その手を離してください」
「あ、ごめんなさい」
触れた瞬間、鈴木の指のマメに気付いた。毎日、何千回もバッドを振ったに違いない。練習を一日でも休むとアスリートの筋肉は衰えてしまうのだ。早く復帰して欲しいと素直に思った。
鈴木は意固地で偏屈な奴だけど、なんつーか、どこか憎めないところがある。
「ところで、写真はどこで見つけたのですか? 弟の財布はグランドに面したトイレの個室に捨てられていたそうですが、あなたは、そこで見つけたのですか?」
「渡り廊下に沿って側溝があります。そこにプリクラとポイントカードが落ちていたんです。財布のことはよく分かりません。春先に盗難事件が多発していました。副部長としては事を荒立てることなく、再発防止に努めたのですが……」
「と、言いますと?」
「ロッカーの鍵をかけ忘れた奴を見つけたなら注意したり、合鍵で鍵をかけて予防をしておりました。山田の場合、その日、たまたま、ロッカーの鍵をかけ忘れていたんじゃないかと思います。僕も、その日は忙しくてチェックしておりませんでした。どうも、すみません」
えっ? 鈴木、いい奴じゃん。疑ってごめんね。
「鈴木さんの責任ではありません。そ、そうなんですか……。学校も何かと物騒なのですね」
密やかに、あたしは首をかしげていた。犯人は鈴木じゃないとなると、どう考えても怪しいのはあいつしかない。
本田。
あいつの邪悪な顔が脳裏に浮かんだ。たちまち、心底、胸クソが悪くなって悪寒がしてきた。
☆
病院の女子トイレで髪を整えてから病院前のバス停に向かう。せっかくだから、このまま街を歩いて買い物を楽しむことにしよう。
明日から十月。真夏に比べると秋は日が暮れるのが早い。
明日、騎士の誕生日なのね。何か、プレゼントを買わなくちゃ! だけど、何を買えばいいのか分からないよ。
「そうだ! 澄子さんに聞けばいいかも!」
今頃は、豪華客船でエステやグルメを満喫しているのよね。邪魔にならないようにメッセージを送っておく。
『いきなりですが、騎士の好物を教えて下さい。献立の参考にします』
お料理は苦手だけど頑張って作ってみようと思ったのだ。
ロフトや雑貨店や輸入雑貨に立ち寄り、アロマ・キャンドルなどを買ってみた。楽しみだわぁ。蝋燭の灯りだけでお誕生日を祝うのよ。ロマンチック!