だから、あたしは
 ああ、それ、分かるわ。 桃園って、いつも偉そうな喋り方をしている。あたしもウザイ奴だと思っていた。

 クラスメイトも、苛めたりはしないけれど、桃園のことを扱い難い奴だと感じている。

「子供の頃、一人でポツンと遊んでいたら菊ちゃんが誘ってくれたから嬉しかった。昔から菊太郎は人気者なんだ。菊ちゃんの隣にいることが幸せだった。僕、中学に入ってから女子からも苛められたんだ。僕に嫉妬して僕の飼い猫を川に投げ捨てた女がいた。その時、ちょうど騎士と菊ちゃんがいて二人とも川に飛び込んで猫を救おうとしたけど、菊ちゃんは溺れちゃったんだ」

「えっーーーー!」

「結局、騎士が猫を捕まえて戻ってきた。菊ちゃんは泳げないのに猫のために川に入ったのさ。本当に一歩間違えると死ぬところだったんだ! 結局、菊ちゃんのことも騎士が引っ張り上げた。猫を投げ込んだ奴は我侭なお嬢様だったのさ! 女なんか嫌いだ。でも、だからって僕はゲイじゃないぞ」

 はいはい。分かってますよ。

「でもさ、西島先生みたいな大和撫子もいるじゃん。桃園、美少年なのに、そうやって殻に閉じこもっているのってもったいない気がする。ガールフレンドを作ってエンジョイしなよ」

 すると、眉毛を逆立て、苛立ったように言い返して来たのである。

「山田なんかに、恋愛に関してとやかく言われたくないよーだ! バーカ!」

 早口で言い捨てると急に悲しげに瞳を揺らし始めた。

「その猫の名前はポコタンっていうんだ。僕のせいでポコたんは脚を切断しちゃった」

 話を省略して感情の赴くままに話すから分かりにくいけど、やっと話が繋がった。えっ、まさか、代償って……。

「だから、先刻、言った代償がそれだよ。菊ちゃんの指の回復を願ったらポコタンが車に轢かれて前足がなくなっちゃったのさ。命が助かっただけでも運がいいと思えって、騎士の姉貴に言われたよ」

 苦しげにプルルと声を震わせている。

「まさか、ポコタンに災いが向うとは思ってなかった。僕の身体から何かを奪えばいいのに……。菊ちゃんの利き手と猫の脚が呪術で交換されたんだ。大河内さんは災いを転嫁させる力がある。でも、誰にどんなふうに災いが行くのかは教えてくれなかった。ショックだったけど後悔はしていないよ。それでも、やっぱり、ちょっと哀しかったな……」

 なんだか壮絶だわ。どういう相槌を打てばいいのか分からない。黙り込んでいるから、疑っていると想ったらしい。

「あんたは信じないかもしれないけど、大河内さんには不思議な力があるんだよ」

「……それ、信じるよ」

 ああ、そんなことよりも早く横になりたい。呼吸すると肋骨が軋む。全身から粘っこい汗が出ている。もう歩く気力も無いんだよなぁ。

< 60 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop