だから、あたしは
 シルエットはガラス越しに見えているかもしれないけれど、何とか誤魔化すことができたようだ。オッパイがようやく我が胸に戻ってきた。ホワンと柔らかく手のひらに吸い付くような肌触りに我ながらうっとりしちゃうわ。そうよ。女の身体ってこうなのよ。腰の辺りは滑らかなカーブを描いている。

 何だか分からないけど回復の兆しが見えてきたわ。

 ホッとしたので何か食べよう。

 えーっと、その前に、スマホの充電しないとね。だが、その時、ハッとなる。

 やばーい! すっかり忘れていたけど、澄子さんのメールの返事をまだ見てないわ! という訳で 内容をチェックしてみたところ、こんな感じの返事だった。

『剣には欲しいものは特にないわね。あの子は無欲なの。それと、あの子の好物は卵がけ御飯でぇーす☆☆』

 絵文字入りの返答。こういうところ、澄子さんらしいよね。

 今日は騎士の誕生日。何か、サプライズで騎士に美味しいものを作ってあげたいと思ったのに、これじゃどうしようもないや! 風呂場から出て蔵庫の中身を点検していくと卵は山ほどあったのだ。

「いずみ」

 うわっ。何なのよ。急に名前を呼ばれてドキッとなった。騎士がこちらに近寄ってくるのが分かり、薄闇の中で狼狽していた。

「な、何なの?」

「体調が悪いんだからウロウロするな。ちゃんと寝ていろよ。朝飯は俺が作る。何がいい? 何でも作るぞ」

「あたし! 卵がけ御飯を食べたいの」

「はぁーー。生卵なんだぞ。本当にいいのか?」

「一度も口にしたことがないから食べてみたいの」

「それじゃ、俺もそれにするよ。卵も新鮮だからちょうどいい」 

 また部屋に戻って横になる事にしたのだが、数時間後に日が昇り、二人は食卓についていた。

 卵がけの御飯は予想以上に美味しかった。生卵って妙な触感たなぁと思うのだ。日本人は、ぬめっとしたものが好きなのかもしれない。ヌルッとしていて濃厚。官能的だわ。そんなことを考えつつ、再び床に戻ると横になったのだ。フーッと疲れを感じていた。
 
 そうこうしているうちら、いつのまにかお昼になっていたのである。この時間、まだ騎士は学校にいる。ずっと寝ていてもお腹下は減るのだ。なんか食べよう……。

 台所に入ると料理が置かれていた。狐色に揚がったコロッケと千切りキャベツ。美味しそうだ。お皿の脇にメモが添えててあった。いかにも騎士らしい綺麗な文字だわ。

『おまえの昼食のコロッケだ。デザートを学校の帰りに買うから欲しいものがあればLINEをくれ。いってきまーす』

 午後になると身体も楽になっていた。元気が戻ると時間を持て余してしまっていた。現実的な問題が脳裏をグルングルンと過ぎる。女の子の身体に戻りたいと思っていたのだが、このタイミングで戻ると逆に困惑してしまう。

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