だから、あたしは
「僕はね、いつだってそのままの君が好きなんだよ。君は、そこにいるだけでいいんだ」

 少女漫画の定番の台詞みたいだよなぁ。サラリと言われてドクンと鼓動が跳ねちゃった。

「君だけが輝いて見えるんだよ。君は特別な人なんだ」

 よく分からないけれども心にグッときた。そうだわ。大河内も大切な友達なのだ。よーし、大河内を誘うことにしよう!

「それじゃ、僕とデートしてくれますか? お琴のライブなんて興味なんてないかもしれないけど、今度の土曜日の夜は空いてますか?」

「ああ、いいよ」

 子供みたいに嬉しそうに頷いている。処女の言うことしか聞かないユニコーンに似ている。

 大河内って本当に不思議な人だわ。

                   ☆

「やぁ、山田くん」

 金曜の夜。あたしは洒落たカフェで待ち合わせをしていた。すると大河内が時間ピッタリに現れたのだ。本田が住んでいた駅の裏手にライブ会場がある事に気付いて少し心が曇った。

 本田ことを思い出すと胸が濁り、たちまち苦しくなるけれど、大河内と一緒だと思うと不安が遠退いていく。だって、大河内は空気清浄機のような人なんだもの。

 今夜の大河内のファッションはモノトーンだった、しかも、モード系のお高い洋服が似合っている。ハイブランドを着ても嫌味にならないところがいい。あたしは、レモネードを飲みながら言う。

「お琴のコンサートってお座敷でやるのかな? 正座は苦手なんだ」

 あたしがそう言うと、対面に腰掛けている大河内が首を振った。

「西島愛梨の演奏会っていうのはガールズバンドだよ」

「へ? まじっスか?」

 聞いてビックリ。お琴とピアノとバイオリンで構成したロックバンドということだった。

「ボーカルの女の子がめちゃくちゃ歌が上手くて評判になっているよ。お琴を弾くアイリは、作詞を担当している。君は知らないと思うだろうけど西島先生は僕の母方の従姉だよ。だから、西島先生はマネーシャーになってくれたのさ」

 なるほどね。

 大河内の一族は美形だらけね。

 大河内が、ライブハウスのホームページを開きながら、いつもの超然とした顔で説明している。

「アイリはしつこいよね。歌詞はすべて騎士くんへの愛の言葉になっている。あれは公開ラブレターなのさ。本当に熱烈なんだ。ある意味、粘着なストーカー気質を発揮しているとも言えるんだよ」

「アイリさんって美人なの?」

「一見すると華やかな美少女っぽく見える。でも、ハッキリ言うとカエルちゃんに似ているよ。目と目が離れているからね。君や桃園の方が目鼻立ちは綺麗だと思うよ」

「騎士は、今もアイリさんと親しいの?」

「アイリが一方的に騎士くんにへばりついているんだよ。何かと理由をつけて迫っている。アイリは懲りない奴なんだ」

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