だから、あたしは
大河内があたしに説明してくれている。
「まだ、彼等は自宅に着いてない。バスに乗ったらしい。急げば間に合うよ。タクシーで追えば何とかなりそうだ」
さぁ、急ごう。アイリさんの家は隣の駅の近くにある。妙な展開だが、三人で、アイリさんの魔の手から騎士を救出しようとしているのである。
「桃園、本当にアイリさんって人が猫を川に投げたりする人なの?」
タクシーの後部席にもたれながら尋ねずにはいられなかった。
「本当さ。橋の上から投げ落としたんだ。あいつは悪魔だ。ポコタンは、いつも学校帰りの僕を迎えに来る。橋の欄干のところに座って待っている賢い猫だったのに」
バスよりもタクシーのあたし達の方が先に到着していた。あたし達が先に門の前で待っていると、曲がり角の向こうから女の子の甲高い声が聞こえてきた。
「うわっ! あれはクソ女のアイリだよ!」
桃園が、門の影から薄暗い路地の向こう側をこっそり覗き見していく。
「……あっ、やべー、あいつらキスしている!」
あたしは向こう側を見つめる。確かに小柄な女の子が背伸びをして騎士の首に手を回している後ろ姿が見えた。キスをしているように見える。
「騎士も、アイリさんのことが好きなのね」
「果たして、そうかな?」
そう呟いたのは大河内。
「そうに決まっているわ! だって、騎士は真面目よ、いい加減な気持ちでキスなんてしないもん!」
思わず大声になってしまう。しかも、女言葉になっていた。でも、いいわよ。
「もう、帰ります! 大河内さん、ねぇ早く帰りましょう!」
こんなふうに待ち伏せしている自分が情けなくなってくる。と、その時、背後から女の子の鋭い声が響いて、あたしは振り向く。
「そこにいるのは誰よ! 怪しいわね。コソコソして何なの。警察を呼ぶわよ!」
女の子は息巻いているが、その隣の騎士が制している。
「アイリ、よく見ろよ! おまえの従兄の大河内先輩がいるぞ」
騎士が、興奮気味のアイリさんを宥めている。そして、こちらに向かいながらアイリさんが不思議そうに言う。
「やーだ。桃園、何でここにいるのよ?」
すると、桃園が騎士に言った。
「もちろん、騎士を守るために来たんだ! そいつの家に入ったら駄目だ! その女、きっと騎士を家に泊めようとするに決まってる! 淫乱の性悪女なんだからね!」
「何よ! 桃園! あんた、また邪魔しに来たのね! 昔っから、あんた、あたしの悪口を言いふらしてたよね。嫌な奴! 何よ! そこ、どきなさいよ!」
「嫌だ。騎士を魔女から守るぞ!」
桃園は、ムキになって弁慶のごとく脚を広げて踏ん張っている。アイリさんがヒステリックに目を軋ませた。
「何なのよ! なんで、いつもそうやって、あたしのことを嫌うのよ。あたしが何をしたっていうのよ!」
「まだ、彼等は自宅に着いてない。バスに乗ったらしい。急げば間に合うよ。タクシーで追えば何とかなりそうだ」
さぁ、急ごう。アイリさんの家は隣の駅の近くにある。妙な展開だが、三人で、アイリさんの魔の手から騎士を救出しようとしているのである。
「桃園、本当にアイリさんって人が猫を川に投げたりする人なの?」
タクシーの後部席にもたれながら尋ねずにはいられなかった。
「本当さ。橋の上から投げ落としたんだ。あいつは悪魔だ。ポコタンは、いつも学校帰りの僕を迎えに来る。橋の欄干のところに座って待っている賢い猫だったのに」
バスよりもタクシーのあたし達の方が先に到着していた。あたし達が先に門の前で待っていると、曲がり角の向こうから女の子の甲高い声が聞こえてきた。
「うわっ! あれはクソ女のアイリだよ!」
桃園が、門の影から薄暗い路地の向こう側をこっそり覗き見していく。
「……あっ、やべー、あいつらキスしている!」
あたしは向こう側を見つめる。確かに小柄な女の子が背伸びをして騎士の首に手を回している後ろ姿が見えた。キスをしているように見える。
「騎士も、アイリさんのことが好きなのね」
「果たして、そうかな?」
そう呟いたのは大河内。
「そうに決まっているわ! だって、騎士は真面目よ、いい加減な気持ちでキスなんてしないもん!」
思わず大声になってしまう。しかも、女言葉になっていた。でも、いいわよ。
「もう、帰ります! 大河内さん、ねぇ早く帰りましょう!」
こんなふうに待ち伏せしている自分が情けなくなってくる。と、その時、背後から女の子の鋭い声が響いて、あたしは振り向く。
「そこにいるのは誰よ! 怪しいわね。コソコソして何なの。警察を呼ぶわよ!」
女の子は息巻いているが、その隣の騎士が制している。
「アイリ、よく見ろよ! おまえの従兄の大河内先輩がいるぞ」
騎士が、興奮気味のアイリさんを宥めている。そして、こちらに向かいながらアイリさんが不思議そうに言う。
「やーだ。桃園、何でここにいるのよ?」
すると、桃園が騎士に言った。
「もちろん、騎士を守るために来たんだ! そいつの家に入ったら駄目だ! その女、きっと騎士を家に泊めようとするに決まってる! 淫乱の性悪女なんだからね!」
「何よ! 桃園! あんた、また邪魔しに来たのね! 昔っから、あんた、あたしの悪口を言いふらしてたよね。嫌な奴! 何よ! そこ、どきなさいよ!」
「嫌だ。騎士を魔女から守るぞ!」
桃園は、ムキになって弁慶のごとく脚を広げて踏ん張っている。アイリさんがヒステリックに目を軋ませた。
「何なのよ! なんで、いつもそうやって、あたしのことを嫌うのよ。あたしが何をしたっていうのよ!」