だから、あたしは
「きゃーーーーーーっ!」

 あたしは金髪の若者に押さえつけられていた。車内には男達が三人。金髪が前の席にいる男達に向かって話しかけている。

「なぁ、これが例のオカマなのか?」

 金髪は、すべての指にゴツゴツした銀の指輪を嵌めている。それに、たくさんのピアスをつけている。舌先も鼻にもピアス。運転手も助手席の男も十代のように見える。

 運転手の赤い服の男がニヤニヤしながら、こっちを見ている。

「本田、チョロイもんだぜ。おまえの獲物は捕まえてやったぜ」

 本田? 驚いた事に助手席にいたのは本田だった。金髪の男と本田は、お揃いの金のネックレスをぶら下げている。本田が暗い顔でこちらを睨みつけている。

「山田、てめぇのせいでこっちは偉い目に遭ったんだぞ。日本を去る前に仕返ししておかないと、こっちの気が済まないんだよ」

 こいつ、まだ日本にいたのね……。

 こいつの顔を見るだけで心が濁るのよ。

「本田さん、こんな事をしてタダで済むと思っているの? この辺りは防犯カメラだらけなんだよ。誘拐なんてしたらすぐ分かる。あなたのお父さんに、今回の事をどう説明するつもりなの?」

 二度としないと約束したと聞いている。だが、本田が憎らしい笑みを湛えたまま言い放ったのだ。

「俺は、なーんもしねぇよ。今日の午後には空港に向かうことになっている。飛行機に乗った頃に、おまえがリンチに遭うという筋書きになっている。おまえがどうなろうと、ハワイにいる俺には関係ないんだよ。ぶぁーーーか!」

 本田はアリバイを作って、あたしを痛めつけるつもりなのだ。

「ここにいる二人は未成年だ。特に、こっちの金髪の聖麻は十五歳なんだぜ。おまえの骨が折れたぐらいじゃ、たいした罪にはならねぇよ。殺しはしねぇよ。殺すと罪が重くなるからな」

 こいつ等の車は信号で停まっている。横断歩道の信号が点滅している。信号が変わると車が走り出してしまう。今のうちに逃げ出した。くそっ。がロックされているのね。しかも、あたしの身体はシートベルトによって拘束されている。

 あたしは苛立ちを込めて尋ねた。

「本田さんは、ずっと狙っていたの?」

「まぁな。チャンスがあれば潰してやろうと思ってたぜ。つーか、昨日の夜、この道で、おまえと大河内を見かけたんだよ……」

 すると、運転手していた奴が面白そうに言った。

「まさか、こんなに上手く出会えるとはな。俺は、暇つぶしに車を転がしていたんだけどな。いずみちゃーん、おまえがクソ生意気な態度を取るから悪いんだぜ。俺達の遊び仲間を陥れるような奴は許せないなぁ。おかげで、本田はハワイに島流しだぜ」

 運転手の男がアクセルを踏み出して強引に発進しようとしている。四駆の後部座席から、あたしは必死の想いで外の世界を見つめた。

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