だから、あたしは
 あたしがシートベルトを外して外に出る。警察が来ると金髪も降りてきた。そして、悔しげに呟いた。

「跳ねられたのか!」

「ああ、そのようだ」

 騎士は路上で倒れている。うつ伏せの状態で額から血を流して気を失っている。

 ああ、どうしよう!  自分の愚かさを後悔せずにはいられない。あたしのせいなのよ!

 騎士は、あたしが誘拐されるのを見て助けようとしてくれた。行かせまいとして、車体の進行を防ごうとして撥ねられてしまったのよ!

「騎士! しっかりして!」

 横たわる騎士の髪をそっと撫でながら泣いた。駆けつけた救急隊員が優しく告げている。あたしを騎士から引き離しながら囁いている。

「お友達なんですね。大丈夫ですよ。さぁ、こちらへ」

 巡査が駆けつけた。金髪はアスファルトに座り込んで口惜しげに拳を叩き付けている。あたし達は歩行者達に取り囲まれていた。

 騒然としている。

 あたしは見守るしかなかった。救急車隊が騎士を乗せて立ち去っている。マンション近くの舗道には、警察に事の成り行きを説明する大河内がいた。彼は何を話しているのだろうか。

 あたしも警察に事情を話した。正直に、本田に連れ去られそうになった事を告げたのである。 

          ☆

「では、もう帰っていただいて結構です」

 警察の事情聴取は終わった。

 やっと解放された。

 この間、騎士の診察や治療はまだまだ続いている。

 大河内があたしの側にいていくれている。ガランとした休日の総合病院のロビーの長椅子に腰掛けている。あたしの肩を叩いてから呟いた。それは、思いがけない告白だった。

「君が受ける痛みを受けたせいなんだよ。騎士くんが厄受けの王子様になったんだね……。僕は、君の災いを転嫁したんだ」

「呪術で騎士を犠牲にしたのですか! そんなの、ひどい……。よくもそんなことを」

「違うよ!」

 ピリリと空気が歪んでいる。透明な痛みや苛立ちを感じさせる声だった。

「君を最も愛している人間が傷みを引き受ける筈だった。君が僕を一番に愛さなくとも、最も愛しているのは僕だと思っていた。だから、僕が痛みを引き受けると思った。桃園の時もそうだった。桃園を最も慕っている猫が痛みを引き受けてくれたんだよ。僕は自惚れていたのかもしれない。これでハッキリとした。君を世の中で一番想っているのは騎士くんだっだんだ」

「そ、そんなこと……」

「ないと思うのかい?」

 大河内さえも認めたくないというふうに見える。大河内は、あたしが受ける痛みを引き受けることで愛を示したかったのだろう。渋い顔をしている。

「結果的には怪我をしたのは騎士くんだったんだ。君が受ける筈だった痛みや怪我を彼が背負ってくれたんだ。こんなことなってすまにい。僕は、今度こそ本田を許さない」

「告訴するのですか?」

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