残念姫、王子に溺愛される
「突然、どうしたんですか?」

「聞かせて?」

「兄みたいな存在です」

「そっか」

「歩稀さん?」

「緋月、君のこと“大切な宝物”って言ってた。
だからなんか、特別な関係なのかなって」

「うーん…
私、大学一年生の時に男の人に騙されたことがあって…
たぶん緋月くん、そのことを心配してるんだと思います。
それに私達、私の父と緋月くんのお父様が学生の頃からの親友なので、生まれた時から一緒なんです。
だから、本当に兄妹みたいな感じなので……
そうゆう意味で言えば、特別かもです」

「そっか…」

「でも今の私の“特別”は、歩稀さんです……!」
元気のない歩稀に、恋羽ははっきりとした口調で言った。

「え?//////」

「確かに緋月くんのこと、大切な人だと思ってます。
でも、両親への気持ちと同じというか…
歩稀さんへの気持ちとは比べモノにならないです。
私にとって、歩稀さんが一番です…!」

「……/////」

本当に……
ピュアで、真っ直ぐな女……!

「歩稀さん?」

「ありがとう!」

「え?」

「ありがとう、恋羽!
僕にとっても、恋羽が一番で特別だよ!」

「フフ…はい!」
ニコニコしている恋羽。

歩稀は愛おしくて堪らなくなる。
思わず、顔を近づけた。

「え……!?ほ、歩稀さん!?」
口唇がくっつきそうで、慌てて押し返す。

「あ…ごめん…(笑)
つい……」

「あの、ここは外なので…//////」

「そうだね(笑)ごめんね。
そろそろ、出ようか!」

地下駐車場に向かう。
いつものように助手席に恋羽を乗せ、シートベルトを締めて頭をポンポンと撫でた。

その流れで、恋羽に軽くキスをした。

「……!!?/////」

「フフ…可愛い!」

「ふ、不意打ちはダメです!//////」
(絶対私、変な顔してる…//////)

「だって、恋羽が可愛いからしたくなっちゃうんだもん!」

「……/////」
(可愛いって…///////)

「ほんと、可愛いね!」

「歩稀さん、美的感覚おかしいって言われません?」

「はい?(笑)」

「私のこと可愛いって言う人、100人に1人くらいですよ?」

「じゃあ僕は、その1人!
てか、感覚がおかしいのは99人の方だね!」

クスクス笑う歩稀に、恋羽も困ったように笑っていた。

その足で緋月にプレゼントを渡しに向かった。
喜んでくれたようだったが、やっぱりどこか上の空だった。


歩稀、恋羽、緋月。

三人にそれぞれ、なんとも言えないモヤモヤが棲みついた。


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