残念姫、王子に溺愛される
ソファに再度座らせ、歩稀は足元に跪いた。

「さっきのグラスで?」

歩稀の問いかけに「はい」と頷く、恋羽。

そこに救急箱を持った従業員が駆けつけてきた。
「聖王様!」

「あ、こっち!」
従業員から受け取り、恋羽の手首を手当てをする。

「聖王様、手当てはこちらで……」

「いいから!
君は下がって?」
代わろうとする従業員に断り、下がらせる。

「破片は……傷口に入ったりしてないね。
ちょっと滲みるからね。
我慢して?」

「……っ…」

「大丈夫。
すぐに終わるよ!
傷口も、そんな深くないみたいだし…!」

優しく丁寧に手当てをしている歩稀に、恋羽は見惚れていた。
「……/////」

「よし!もう、大丈夫!」
そう言って、顔を上げた歩稀。
 
見惚れていた恋羽と、目がバチッと合う。

「……/////」

「……/////」

ドクン…と、心臓が大きく動いた。

目が離せない。
離したくない。

固まったように動けなくて、息をするのも忘れるくらいだった。

「―――――歩稀様!」

そこに歩稀の執事・真田(さなだ)が声をかけてきて、漸く身体が動いたのだった。

「歩稀様、○○様がお呼びです。
会場へよろしいですか?」

「わかった。
あ、真田、この救急箱を従業員に返しといて」

「かしこまりました」

そして歩稀は、着ていたジャケットを脱ぐと恋羽の肩に掛けた。

「え……あ…//////」

「着て帰って?
かなり濡れてるから、風邪でもひいたら大変だ」

「いえ!大丈夫です! 
ジャケット汚れますし、今からお迎えを呼んで帰りますので、問題ありません!」

「いいから!
…………それに、そのジャケットがあれば“僕達はまた会えるでしょ?”」

「え…//////」

歩稀は微笑むと、真田を連れて会場に戻っていった。


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