残念姫、王子に溺愛される
そして――――歩稀が帰ってきた。

「ただいま、恋羽!
…………恋羽〜?」

シン…と静まり返っている、室内。

え?もしかして、引っ越してない?
途中で、ホームシックになったとか?

しかし玄関には、恋羽のパンプスが揃えてある。

シューズボックスの中にも、恋羽の靴が並んでいた。

ちゃんと、引っ越してきているようだ。

歩稀はホッと肩を撫で下ろし、中へ入った。 
リビングにもいなくて、恋羽の部屋に向かった。

ノックをして「恋羽?入るよ?」と声をかけ、ドアを開けた。

「こは…
………フフ…!可愛い…//////」

恋羽はロッキングチェアに座り、ぐっすり眠っていた。
歩稀は愛おしそうに微笑んで、恋羽を起こさないように抱き上げた。

寝室へ向かい、ベッドに優しく下ろす。

「荷解き、疲れたのかな?」
ベッド脇に腰掛け、恋羽の前髪を優しく払った。

しばらく寝顔を見つめ、寝室内にあるウォークインクローゼットに向かった。

部屋着に着替えて、再度ベッド脇に腰掛けた。

「恋羽、早く起きて〜」 
頬を突っついてみる。

「んん…フフ…」
恋羽が少し唸って、微笑んだ。

「ほんと…可愛いな…//////」 

しばらく待ってもなかなか起きない。
歩稀は恋羽の額にキスを落とし、静かに寝室を出た。

キッチンに立ち、夕食の準備を始める。

恋羽が好きだと言っていた、ロールキャベツを作ろう。
そう思い、下ごしらえに取りかかった。


一方の恋羽。

「んん…」
漸く目を覚まし、起き上がる。

「………」
しばらくボーッとして、周りの状況を確認する。

「………あれ?なんで、ベッドに寝てるの?
…………確か…ロッキングチェアに座ってたよ…な……あれ?あれ?
…………………
…………はっ…!!?
ヤバい!!」

やっと状況を認識し、恋羽はベッドを駆け下りた。

バン!!とリビングの扉を開ける。
「歩稀さん!!」

すると、キッチンから歩稀が「あ、恋羽起きた?」と顔を出した。

歩稀は換気扇の下で煙草を吸っていたようで、煙草を灰皿に潰し微笑んだ。

そして「恋羽、はい!」と両手を広げた、歩稀。

恋羽は照れたように微笑んで、歩稀の腕に飛びついた。

「フフ…やっと、ずっと一緒にいられる!」

「はい!
…………あ、歩稀さん!」
腕の中から見上げた。

「ん?」

「おかえりなさい!」

「あ…//////フフ…うん、ただいま!」

二人は、幸せそうに微笑み合った。


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