呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「わざわざ、聞くまでもない」
『それもそうだね』

 目線だけでも射殺せそうなほどに穏やかではない姿を見せた彼を、ハクマも警戒したのだろう。
 呆れた様子で耳を伏せた白猫は、夫婦に提案する。

『だったら、気晴らしにデートを楽しむのはどうかな?』
「意味が分からん……」

 こんな状況下でデートを提案されたところで、はいそうですかと気持ちを切り替えて外に出る気にもならない。
 オルジェントは嫌そうに、顔を顰めたが――。

「いいですね……!」

 意外なことに、イブリーヌは乗り気だった。

「陛下と一緒に……ヘスアドス帝国の、さまざまな場所を、隅々まで……見学してみたいです……!」

 妻のささやかな願いを叶えてやらぬほど、オルジェントも鬼ではない。
 白猫から視線を逸らすと、イブリーヌの真意を探るように瞳を覗き込む。

「……昼食も兼ねて……。二人で城下町に、顔を出すか」
「はい!」

 オルジェントの両腕から抜け出た彼女は、急いで準備を始めた。
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