呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
(どうしたんだろう……?)

 衣服の乱れでもあるのだろうかと彼女も不思議に思いながら自身の姿を確認するが、変なところはどこにもない。
 困ったイブリーヌは、再び白猫に意見を聞こうとしたのだが――。

「まずは、髪飾りだな」

 それよりも先に、夫が呆れたように言葉を紡ぐ方が早かった。

「あ、髪の毛……!」

 彼の指摘を受けたイブリーヌは、髪を整えるのをすっかり忘れたことに気づく。

(でも、私……。髪飾りをプレゼントして頂いても、使いこなせる気がしないのだけれど……)

 頭を押さえた彼女が難しい顔で思い悩む姿を目にした夫は、先程まで怒り狂っていたのが嘘みたいに。
 流れるような動作で、妻の腰を抱く。

「へ、陛下……。あの……」
「行くぞ」

 戸惑うイブリーヌを当然のように伴い、彼はゆっくりと歩き出した。

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