呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
(あれは……)

 イブリーヌが目にしたのは、化粧箱から漏れ出る禍々しい闇のオーラだった。

 常人であれば、触れただけで体調を崩すに違いない。
 そんな強い力を醸し出している光景を目にした彼女は、オルジェントの裾をクイッと引いて、夫にそれを確認するようにと無言で諭す。

「そこの箱には、中身が入っているのか」
「ええ……。しかしこれは、悪しき魂が取り憑いており……。売り物としては……」

 彼はすぐさま悪しき魂達が集まった化粧箱を視界に捉えると、その危険性を悟ったようだ。
 青白い顔で視線を逸らす店主に凄む。

「見せろ」
「き、危険です! お祖母様が王族の力を借りて、やっとのことで封印したのに……!」
「客の言うことが聞けないのか」
「う、ぅ……。どうなっても、知りませんからね!」

 女性は捨て台詞とともに、鍵を解錠し――勢いよく小箱を開けた。
 そこからは、禍々しい亡霊の成れの果てが飛び出してくる。

『あ、ア……』

 声にならない言葉を口にするあたり、意思疎通は困難に見える。
 オルジェントはすぐさま、それらを粉砕するためだろう。
 背中の大鎌に、手を伸ばしたが――。
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