呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
(こんなところで大鎌を振り回したら、お店に迷惑がかかってしまいます……!)

 服飾店の商品を傷つけては大問題になると危惧したイブリーヌは、彼の手首を掴んで止めた。

「あ、あの……。初め、まして……」

 彼女が一人きりであったなら、異形の化け物と貸した亡霊に声をかけることはしなかっただろう。
 だが、イブリーヌの隣には、オルジェントがいる。

(陛下と一緒なら……きっと、大丈夫だと、思うから……)

 何があっても助けてもらえると夫を信頼している妻は、勇気を振り絞り――異形の化け物を睨みつけるオルジェントの隣で、それに声をかけた。

「私は、イブリーヌと、申します……」
『イぶ、り……ヌ……』
「あなたほど、力が強い方なら……。きっと、みなさんと、仲良く……なれるような気がします……」

 彼女は虚空を見つめ、自らの周りに漂う亡霊達に協力を要請する。
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