呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
『ようこそ、悪しき魂の集合体!』
『悪さをするのは、愛し子が傷ついた時だけ!』
『それが守れないなら、死神に魂を刈り取られるよ』
『さぁ、どうする?』
『みんなと一緒に、いい子になる?』

 クスクスと笑い声を上げながら囁き合う彼らに、異形の化け物は手を伸ばす。
 それは、愛し子を守るために飛び回る、亡霊達とともに生きると誓うのと同義で――。

「……私はあなたを、歓迎します」

 亡霊の愛し子である彼女がそれに怯えることなく受け入れると、悪しき魂達の集合体は勢いよく飛び散り――個々の集合体として、店の中を飛び回った。

『ハジメマシテ、イブリーヌ』
『亡霊の愛し子』
『みんな、いい子にするから』
『嫌わないで』

 悪しき魂達は個々の能力こそ低いが、束になると厄介なのだ。

(この状態なら、もう大丈夫……)

 彼女はほっと胸を撫で下ろすと、不安そうに飛び回る彼らを歓迎した。

「……はい。悪さをしなければ、私はみなさんを嫌うことはないとお約束します」

 禍々しいオーラを放っていた悪しき魂達は、亡霊の愛し子であるイブリーヌの言葉を素直に受け止めた。
 戦闘態勢を解いた彼らは、彼女が危機的状況に陥ることがない限り――人間を襲うことはないだろう。
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