呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
『さすが、亡霊の愛し子』
『大好き』

 彼らが口々に愛を囁く声を、耳にしながら。
 イブリーヌは警戒の色を隠せない夫を安心させるように、微笑みを深めた。

「もう、大丈夫……そう、です」
「……ああ……」
「あの……。あの子達が取り憑いていた、器に……。触れても、構いませんか……?」
「ああ」

 オルジェントの許可を得たイブリーヌは、今はただの髪飾りとなってしまった黒薔薇のバレッタを手に取った。

(どうしてだろう……?)

 彼女はそれに触れた瞬間。
 まるで最初から、自分のものであったような感覚に陥り困惑する。

(しっくり来るのは……。悪しき魂達が、長い間依代にしていたから……?)

 いくら現在は抜け殻になっているとしても、長年亡霊達の住処となっていたのだ。
これを放置しておけば、いつまた下級霊達が住み着くかわからない。

(陛下に破壊してもらうか、私が身につけるべきか……)

 イブリーヌは迷った末に、オルジェントへ助けを求めるような視線を送った。
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