呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「昼食を通り越して、ティータイムの時間になってしまったな」
「まぁ……。もう、そんな時間ですか?」

 時間を忘れてヘスアドス帝国の城下町をくまなく夫と散策していたイブリーヌは、昼食を取るのをすっかり忘れていた。

 指摘を受けて初めて自分が食事をしていなかったと気づいた彼女は、恥ずかしそうに彼から視線を外す。

「駄目ですね……。もっと、時計を気にしていないと……。すぐ、食事を忘れてしまいます……」
「その様子だと、あまり腹は減っていないようだな」
「そう、ですね……。食べなくても、大丈夫なくらいには……」
「ならば、とっておきの場所がある」

 彼はイブリーヌにそう告げると、当然のように指先を絡め――ある場所へと連れて行った。

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