呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「た、大変……! 白猫さん! 大丈夫ですか……?」
『う、ぅ……。今日は、踏んだり蹴ったりだ……』

 彼女は全身ずぶ濡れのハクマをドレスが汚れるのも厭わずに、抱き上げた。
 その後事前に用意しておいた清潔な布で、白猫の身体を拭いてやる。

「動くなよ」

 明らかに意気消沈した様子で白猫が項垂れていると、オルジェントは妻とハクマにひと声かけてから。
 背中に背負っていた大鎌を引き抜き、空中に浮かび上がる泥水のシルエットを消滅させた。

「きゃ……っ」

 汚水がピシャンと勢いよく跳ね、イブリーヌの頬に付着する。

「大丈夫か」

 全身ずふ濡れにならず済んだのは、オルジェントがマントを翻して庇ってくれたおかげだ。

「あ、は、はい……。ありがとう、ございます……」

 妻の悲鳴を耳にした彼は、何事かと心配そうにイブリーヌへ声をかける。

 少しだけ気恥ずかしくなった彼女は、問題ないことを伝えてから。
 白猫の全身に纏わりつく水気を拭き取ることだけに、集中した。
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