呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
(暖かい……)

 彼のマントにすっぽりと全身を覆い隠されたイブリーヌは、先程まで抱いていた悲しい気持ちが夫から与えられるぬくもりにより、どこかへ吹き飛んで行くような感覚に陥った。

『いいかい、イブリーヌ。黒猫の姿を目にしても、近づいてはいけないよ』
「で、ですが……。黒猫さんは、私のパートナーになる方なんですよ、ね……? 一人は、寂しいですし……お話すれば……」
「話し合いで解決できれば、苦労はしない」
「陛下……」
「俺もできるだけ、イブリーヌのそばにいる」

 夫の言葉を受けたイブリーヌは、瞳を輝かせて笑った。

(嬉しい)

 結婚当初に比べて格段に彼が妻へ会いに来る機会は増えているが、四六時中一緒にいられる時間は三日に一度しかない。

(陛下が私を守るために、一緒にいると約束してくださるなんて……夢のようだわ……)

 それだけでは足りないと思うほどに。
 オルジェントへ気を許し始めているイブリーヌにとって、この提案は願ってもみないことだ。

「はい。よろしく、お願いします……」

 自身が危険に晒されていることなど、すっかり忘れ。
イブリーヌはここぞとばかりに、オルジェントのぬくもりを堪能するのだった。
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