呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
 白猫から黒猫が覚醒したと言われてから。
 イブリーヌは毎日のように、悪夢に苛まれていた。

(陛下……)

 夫に助けを求めたところで、彼がやってくることはない。
 オルジェントもまた、王城の中へ頻繁に出現するようになった悪しき魂を刈り取るのに必死だったからだ。

『嘘つき』
『毎日会いに来てくれるって言ったのに』
『約束破った最低男』
『どうしてあんな奴を、信じるの?』

 イブリーヌの願いを反故にした。
 夫を責める亡霊の声を聞くのが、一番苦しかった。

(陛下は、お忙しい方なの……。約束を守れないことだって、あるわ……)

 どんな事情であれ。
 約束を破るような彼を信じて待ち続けた結果――かつて彼女は長い間傷つき、苦しんでいたからだ。

『私達は、約束を守るのに!』
『愛し子の願いは、なんでも叶えてあげる』
『早く頼って!』
『みんな、イブリーヌの味方!』

 悪しき魂達は口を揃えて、オルジェントを悪く言った。
 彼よりも自分達の言葉を聞くべきだと、毎夜囁かれる声を耳にするたび、おかしくなってしまいそうだ。
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