呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
『わたしの使命は……。あなたを亡霊の女王に、生まれ変わらせること……』

 黒猫はイブリーヌが、命を落とすのを望んでいるからこそ。
 彼女を敵視する女性と、手を組んだのだろう。

 ハクマからコクマが自身のパートナーになるはずだった動物だと聞かされていなければ。
 彼女はこれほど強い喪失感を抱くことは、なかっただろう。

(私はやっぱり……陛下の妻になっては、いけなかったんだ……)

 イブリーヌの瞳からは、静かに一筋の涙が頬を伝って流れ落ちた。

「ごきげんよう、イブリーヌ様。生まれ変わるようなことがあっても、二度とオルジェント様の妻を名乗らないでくださいませ」

 勝利を確信した女性はイブリーヌに笑顔を浮かべてそう宣言すると、闇のオーラを勢いよく放つ。

「イブリーヌ!」

 ――だが、その攻撃は空中を漂っていた亡霊と、異変を察知し駆けつけてきたオルジェントの大鎌によって防がれた。
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