呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「深夜に現れる悪しき魂は、一振りで退治できるような小物ばかりだが……昼間に出現する奴らは、そうもいかない」
「私が眠っている間に……会いに来てきてくださったのですか……?」
「ああ」

 オルジェントは毎日のようにイブリーヌの寝顔を堪能していたが、気持ちよく寝息を立てて眠る妻を、わざわざ叩き起こすのも悪いだろうと声をかけることをしなかった。
 その結果、彼女は夫に必要とされていないのではと不安になり、一人で傷ついていたようだ。

「そんなの……ずるい、です……」

 涙声でポツリと呟いたイブリーヌは、彼の胸元を何度も叩く。
 夫は抵抗することなくそれを甘んじて受け入れると、彼女の背中を優しく撫でつけた。

「私が起きている時に、会いに来てくださらなければ……。意味がない、です……」
「……すまない。また君を、不安にさせてしまったな……」
「許しま、せん……」

 普段通りに優しく口元を綻ばせるとばかり思っていたオルジェントは、彼女の言葉を受け、目を見張った。
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