呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
(どうして、私を呼ぶの……?)

 気の所為だと見て見ぬ振りをしたかったが――。
 日を増すごとに、その音量は憎悪の籠もったものへと変化していく。

『イブ、リ――ーィヌ』

 昼間にもそれが聞こえてくるようになると、耳を塞いでも貫通する程の大音量になった。

(やめて……!)

 今かつてないほどに恐ろしい悪意の塊が自分に向けられていると知った彼女は、心の中で拒絶するが――。
 彼らはイブリーヌが精神的に参っている様子を見せるたび、嬉しそうにケラケラと笑い声を響かせた。

「イブリーヌ」
「いやぁ!」

 このような状態が一か月も続けば、彼女を追い詰める得体のしれない者達がイブリーヌを害するために名前を呼ぶ声と、愛する人の声を混合してしまい――パニックに陥った妻は、夫を拒絶してしまった。

「何があった」
「あ……。ち、違……。違うの……。これ、は……」
「わかっている。理由を話せ」

 彼の低い声を耳にしたイブリーヌは一瞬で我に返るが――彼女の中は恐怖で支配されている。
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