呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
『愛し子、かわいそう』
『おかしくなってる』
『惑わされないで』

 愛し子が深い悲しみに包まれた姿を目にした悪しき魂達が、見かねてイブリーヌの元へ集まってきた。
 彼らは彼女を慰めるように全身へ纏わりつくと、口々に声を発する。

『気分転換しよう』
『それがいい!』
『外の空気、気分良くなる』
『怖いの、怖いの、私達が吹き飛ばしてあげる!』

 悪しき魂達は白猫が室内に見当たらないのをいいことに、イブリーヌを外へ誘導した。

「外、に……」

 オルジェントを傷つけてしまったと勘違いしている彼女は、強いショックを受けているせいで、正常な判断ができなくなっているようだ。

『こっちだよ』
『もっと早く』
『あの子が待っている』

 黒猫と始めて顔を合わせた日のように。
 ふらふらとおぼつかない足取りで寝室を出た彼女は、亡霊達に先導されるがまま城の外を目指す。

 そこに待ち構える者が、イブリーヌにとっては絶対に顔を合わせたくない人々であることに、気づくことなく。

『イブリーヌ』
「ひ……っ!」

 一か月間悩まされていた恐ろしい声を耳にした彼女は、咄嗟に耳を塞ぎ――声のするほうへ恐る恐る視線を向けた。
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