呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
 あらぬ方向に曲がる瞬間を見捉えた彼女が悲鳴を押し殺せば。
 女性の胸元に抱きかかえられていた黒猫が恐ろしい闇のオーラを放ち――アメリを包み込んだ。

『危険!』
『逃げなくちゃ』
『でも、どこに?』

 イブリーヌに好意的な亡霊達が左側で、右往左往しながら戸惑う声を響かせる中――。

『闇に身を委ねて』
『怖いことなんて、何もないよ』
『全部、諦めちゃえ』

 右側では、彼女を闇の女王として目覚めさせたい悪しき魂達が口々に囁き合う。

「やめ、て……! もう、嫌ぁ……っ!」

 イブリーヌは両耳を抑えて首を振り、拒絶を繰り返す。
 アメリは苦しむイブリーヌに近づき――顔を近づけた。

「ふふ。いい気味ですわ……」

 アメリの満足そうな声音に応えるかのように。
 胸元に抱きかかえられていた黒猫が、イブリーヌに両手を伸ばす。

『さぁ。わたしと、一つに……』

 コクマの指先が、耳を防ぐ彼女の手に触れる直前――。
 イブリーヌの全身が、闇のオーラに包まれた。

「きゃあっ! な、なんですの!? これは……!」

 アメリが慌てるのも、無理はない。
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