呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
 イブリーヌが纏う闇のオーラから、人間に害を成す悪しき魂達が大量に飛び出し――公爵令嬢の身を襲ったからだ。

「た、助けて……!」

 愛し子を傷つけたことに怒りを隠しきれぬ悪しき魂達は、アメリの生気を奪っていく。

「私は、ただ……」

 公爵令嬢は真っ先に胸元の黒猫に助けを求めたが、コクマはいつの間にかアメリの元から離れていた。
 手を伸ばす金髪令嬢よりも、イブリーヌが気になるらしい。
 黒猫は彼女を、感情の籠もらない瞳で見つめていた。

「幸せになりたかった、だけなのに……」

 大地を踏みしめたコクマの赤い瞳が、イブリーヌの黒い瞳と交わる。

『すべての苦しみから、開放されるためには……わたしの力が、必要不可欠……』

 彼女の声を受けた黒猫が、鈴の音が鳴くような美しい声を響かせる中。
 イブリーヌは、頭の中ではよく理解していた。

 (黒猫さんの言葉に、耳を傾けてはいけないと……)

 だが――彼女はもう、疲れてしまったのだ。

 次から次へと。倒しても、倒しても。
 どこからともなくイブリーヌを害するものが、現れる状況に。
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