呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
 最初は母親。次にアメリ。
 人間としてオルジェントのそばで生き続けたいと願う限り。
 彼女を地獄へ引き摺り落とそうと目論む悪しき人間達により、イブリーヌは苦しみ続けるだろう。

『アメリ・テランバ……。せっかく手に入れたあなたの幸せを、壊す敵……』

 黒猫は囁く。

『苦しかったでしょう。辛かったでしょう。すべて、ぶつけても。構わないのよ……』

 今こそ自身を苦しめた存在に復讐をする、ちょうどいい機会だと。

「な、何を言ってますの!? コクマ! あなたの契約者は、わたくしですわ!」

 イブリーヌに話しかける声に異を唱えたのは、アメリだった。
 彼女を指差すと、コクマに命令する。

「早くその邪魔な女を、消滅させてくださいませ! そうすれば、オルジェント様はわたくしものですわ!」

 黒猫が自身の味方だと思っていた公爵令嬢は、イブリーヌを始末するべきだと騒ぎ立てるが……。

「聞いていますの!? 一体なんのために、わたくしがあなたのような胡散臭い黒猫と手を取ったと思いまして!?」

 ――コクマはあえて、アメリの主張を無視しているようだ。
 亡霊の愛し子に対して、言葉を重ね続けた。
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