呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない

「今すぐでなくてもいい。私は時間をかけてゆっくりと、陛下と気持ちを通じ合わせるつもり、でした……」
「まぁ。あなたは……。オルジェント様の、お飾り妻ではありませんの！」

　夫が妻の存在に気づくよりも早く。
　彼の腕の中にいる金髪女性が、いち早くイブリーヌへ視線を向ける。

　その様子を目にしたオルジェントは、まずいと思ったのだろう。

　慌てた様子で女性を抱きしめるのはやめたが、その程度で彼女の怒りが静まれば苦労はしない。

「口を挟まないでください」
「きゃあ！」

　イブリーヌが金髪女性に堪えきれない怒りをぶつければ、待っていましたとばかりに悪しき魂達が襲いかかる。

「陛下は私よりも、その女性が大事なのですね……」

　オルジェントは不倫相手を守るように背中に背負った大鎌を引き抜き、亡霊達を屠るためにそれを振るう。