呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
オルジェントの大きな手に指先を掴まれ闇の中から引き摺り出されたイブリーヌは、黒猫を抱きしめたまま――愛する人の胸へと飛び込んでいく。
「やっと……。この手が、届いた……」
左手で大鎌を手にしていた彼は、彼女の周りを彷徨う悪しき魂達が妻を心配そうに見守っている姿を目にして、危機は脱したと判断したようだ。
背中に武器を収納すると、彼女の指先を自身の手を絡めて苦しそうに言葉を吐き出した。
「君が戻ってこなければ、俺は……!」
「陛、下……」
誰も愛してくれないと、思っていた。
誰も必要としてくれないと、思っていた。
そう思い込まなければ、生きていけないほどに追い込まれたイブリーヌは――彼と夫婦になっていなければ。
こうして再び人間として、オルジェントの腕に抱きしめられることはなかっただろう。
「俺は亡霊の愛し子として生まれた、イブリーヌを……!」
その先を紡ごうとしたオルジェントは、ピタリと言葉を止めた。
モゴモゴと唇は動いているが、声が出てこない。