呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
「イブリーヌ! また貴重な食材を駄目にしたの!?」
「も、申し訳、ありません……っ」
「本当に愚図でノロマね! あなたの分は、それしか用意していないわ!」
「そ、そんな……!」

 怒鳴り声をあげた女性が、丸い物体を土の上に叩きつけたせいで。
 中身が飛び散ったトマトを見つめるのは、瞳に涙を浮かべた少女だ。

「土混じりでも、味は変わらないでしょうし……。問題ないわよね。まだ食べれる状態で果肉が残っていて、本当によかった!」

 きらびやかなドレスを身に纏った女性は満面の笑みを浮かべる。
 麻布の薄汚れたワンピースを身に纏った少女は、力なくその場に崩れ落ちた。

(酷いな……)

 見るも無惨な状態になったトマトを、そのまま食べろと言われたのだ。
 全身の力が抜けるのも無理はない。

「あなたみたいな化け物は、床に這いつくばって食事をするのがお似合いよ!」

 オルジェントは白猫の言う女王の器があの高飛車な女ではないことを願いながら、木の陰に身を隠す。

「ち、違……っ。私、化け物なんかじゃ……!」

 薄汚れた麻布を身に纏った少女は、イブリーヌと言う名前であるらしい。
 彼女はある単語を叫ばれた瞬間に、両耳を塞いで天を仰いだ。
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