呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
『みんな、待っている』
『早く、こっちにおいで』
彼女を恐れた人々は、イブリーヌをこう称する。
『僕達の命を奪った悪者なんかと一緒にいるよりも、楽しいひと時を約束するよ』
――亡霊の愛し子と。
「それでは、誓いの口づけを……」
イブリーヌを覗き込んだ神父は、彼女が苦悶の表情を浮かべて唇を噛みしめる姿を目にしたからだろう。
このままではいけないと悟ったようだ。
「神の祝福など、俺達には必要ない」
通常通り式を進めようとしたが、オルジェントが待ったをかけた。
「長々と、見世物になるつもりはない。不愉快だ」
誓いの口づけを拒否した彼はそう神父に吐き捨てると、イブリーヌの細い手首を掴む。
「しかし、式は予定通りに執り行うとのことですので……」
「行くぞ」
困惑する参列者達と、神父を置き去りにして。
新婦に声をかけた新郎は、彼女を引っ張り教会をあとにした。
『早く、こっちにおいで』
彼女を恐れた人々は、イブリーヌをこう称する。
『僕達の命を奪った悪者なんかと一緒にいるよりも、楽しいひと時を約束するよ』
――亡霊の愛し子と。
「それでは、誓いの口づけを……」
イブリーヌを覗き込んだ神父は、彼女が苦悶の表情を浮かべて唇を噛みしめる姿を目にしたからだろう。
このままではいけないと悟ったようだ。
「神の祝福など、俺達には必要ない」
通常通り式を進めようとしたが、オルジェントが待ったをかけた。
「長々と、見世物になるつもりはない。不愉快だ」
誓いの口づけを拒否した彼はそう神父に吐き捨てると、イブリーヌの細い手首を掴む。
「しかし、式は予定通りに執り行うとのことですので……」
「行くぞ」
困惑する参列者達と、神父を置き去りにして。
新婦に声をかけた新郎は、彼女を引っ張り教会をあとにした。